セルフヘルプ・グループ「生活の発見会」のメンタルヘルス活動的意義(1)
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これまで、ずいぶん長々と話してきましたが、森田療法学会でもっとも私が伝えたかった本論はここからなのです。すなわち、(9),(10),(11),(12)の四枚のスライドで十一項目にまとめて示しましたように、セルフヘルプ・グループとして活動している生活の発見会だからこそ行えてきた、特徴的なメンタルヘルス活動の内容とその意義なのです。その意味をご理解いただくために、これまでの話が必要でもあったのです。
スライド(9) |
(1)当事者が担う活動、地区集談会(スライド(9))
まず、専門家ではない神経症の体験者(当事者)が活動の担い手であるということが、メンタルヘルス活動として大きな意味があると思うのです。
一般的にメンタルヘルス活動といえば、精神科や心理の専門家の人たちがやるものという通念がありますが、一般市民であるみなさんがそれをやっていらっしゃるというところに重要な意義があるのです。専門家というのは、専門的知識や技術があって頼もしいでしょうが、詳しいだけに話す内容や言葉がちょっと難しかったり、自分の専門分野に引き寄せて考えてしまうところもあって、けっこう偏りがあったりもします。とっつきにくかったり、多忙で必要な時に支援してもらいにくかったり、親身な指導はほとんど期待できないというのが実情ですよね。
それが、当事者のみなさんであれば、活動の内容も日常生活に根ざしていて親近感があり、また市民のニーズもしっかり掴んでいて、痒いところに手が届くような対応ができます。また伝え方も誰でもがわかりやすい言葉で、実践的ですぐに役に立つような情報として伝えられることでしょう。
発見会の各地域の集談会活動をイメージしていただくと一番わかりやすいでしょう。そこでは、いろいろな悩みや体験が日常生活の延長線上として語られます。とても現実的でわかりやすく、実際にどう対応したらいいかということにも、実践的な情報とか支援のやり方がそこで示されて、すぐ役に立ちます。また、神経症からの回復だけではなくて、たとえば、親を介護していて大変なんだという話が出ると、うちも親が介護状態でこうなんだという話がまた出てきたりします。人はさまざまなことや状況でいろいろ悩みが生じますから、集談会ではさまざまな悩みが語られて、誰かと共感できて癒されたり、「こういうときは自分はこうしたらすごく良かったですよ」という有用な情報が得られ、すぐ活用できて助かったりということがしばしばあると思います。身近な隣人からの情報や支援というのは、とてもわかりやすくて、受け入れられやすいですね。平易な、日常生活の言葉で語られるので、受け入れられやすいということがあります。
このような、当事者が担う活動は、市民に受け入れられやすく、容易に広く普及していきます。そして、市民生活のニーズをスピーディーに反映して、柔軟な活動が展開できるという大きなメリットもあります。
そしてまた、全都道府県に分布して150カ所の地区集談会が毎月開かれているということ自体が、メンタルヘルス活動として大きな底力を発揮する原動力になっていると思うのです。月々にそこに集う膨大な数の人々が、そこでサポ-トされているということだけでも大変なことです。身近なところに集う場があることの意味も大きいでしょう。また、今日、この会場に全国からこれだけ多数の指導的役割を担ったかたたちが集まられて、熱心に学んだり討議したりなさっていること自体も、発見会が生きた活動をしていることを示してもいると思います。私は、集談会を長年継続して開催し続けてきたみなさんの忍耐強さや、並々ならぬ努力の集積の偉大さに、本当に頭がさがる想いがしています。やはり、それも当事者の底力ならではだなあと、改めて思います。
参加者の生活圏に根ざした地区集談会活動ならではの意義も大きいと思います。12月号でも紹介しましたが、ライフサイクル上の危機や、また現代に特徴的なメンタルヘルスの問題も、そこにいろいろな形で投げかけられ、また援助がなされています。情報として把握されていない無数の活動が、きっとそれぞれの集談会で行われていることだろうと確信してもいます。
(2)助力者原理が生む活動エネルギーの循環(スライド(9))
さきほども話しました助力者原理ですが、それがとても有用な力を発揮するのです。かつて援助を受ける対象者だった人が、回復して援助者となり後進の人を助けるようになり、回復した人が、次の人の回復を助けていくわけですから、非常に経済効率がよく、次々とエネルギーが生み出され続けるということになるわけなのですね。しかも、回復者は使命感を持ってボランティア的に活動を担い、また、活動することでいっそう活力を得ていくわけですから、強力な活動エネルギーを循環的に生み出し続けることになります。効率がよいだけではなく、親身かつ熱心な、血の通った活動がなされることにもなるでしょう。
(3)多数の多彩な回復者を輩出(スライド(9))
精神科の治療や、心理相談(カウンセリング)を受けることへの抵抗感は、最近だいぶ少なくなってはきましたが、まだまだ根強いものがあります。悩んでいても、相談する気にならない、または迷うが踏み切れないというかたがたくさんいらっしゃるかと思うんですね。そういう、医療の場には登場しないかたたちが、悩みを抱えて生活していて、何かの情報で発見会を知り、電話をしてみたり、身近で行われている集談会を知って、行ってみようかという気になったり、というふうに、気楽に行けますね。そのような経緯で会に参加して、発見会だけで回復する方がたくさん出てきたわけです。その人たちが示す回復像は、今までの治療機関の中で回復してきた人とはだいぶ違う回復過程だったり、また回復者像であったりします。別の表現をすれば、社会生活を問題なく送っている人たちも多くそこに登場してくることになったのです。そして、そこから、心の癒しの多彩なモデルが生まれてきていますし、いろんな回復の仕方があるということが示されていると思います。これはまた、一般市民たちのメンタルヘルスの保持・増進や、多様な生き方モデルの提示という分野にも生かされるものだと私は考えます。
そして、また、回復者で力量のあるかたがたくさん出てこられて、人間性回復体験の多数の報告がなされてきました。それは発見誌の体験談であったり、いろいろなところで実際に話されたりとか、それからボランティア活動をなさったりなど、いろいろな場でそれを示していらっしゃると思います。そして、使命感を持った有能な活動家をたくさん輩出してきました。私はここに集われたみなさんは、みんな力量のある回復者であり、使命感を持った活動家だと思います。
(4)メンバーが担う、非営利の活動
最後に、セルフヘルプ・グループ活動の特徴としては、メンバー中心の活動であり、専門家の関与はないか、あってもわずかであることです。このことは、私たち専門家の側も、無用な介入をしないように気をつけなくてはいけませんが、また、みなさんも、発見会のメンバーとして胸を張って活動を展開し、専門家にも臆せずアプローチもしていただきたいと思っています。
これまで述べてきましたように、セルフヘルプ・グループ活動は、回復者(当事者)、すなわちみなさん自身が担っているというところに意義があるので、私たち専門家は、サイドからは援助できますが、会の方向とかを云々する立場ではないのです。ある種の自助グループの中には、医者だとか指導者がかなり関わっているグループがあります。また治療者に依存している傾向があるグループもありますけれども、発見会の場合は、正真正銘メンバーのみなさんが担っていらっしゃる活動になっていると思います。
もうひとつ、セルフヘルプ・グループの条件として、経済的な利潤を追求する団体ではないということがあります。これがまさに、発見会が特定非営利法人(NPO)となったことの所以(ゆえん)でもあるわけです。
(4)社会的な高い評価、社会への情報発信
そんな、使命感を持った有能なメンタルヘルス活動家の筆頭が岡本常男さんでしょう。中国をはじめ世界に森田療法を広めたりと、そのとらわれないエネルギッシュな活動には目を見張る想いがします。岡本さんが、2002年に保健文化賞を授与されたのはみなさんご承知の通りです。
発見会も1998年に、森田理論を応用した幅広いメンタルヘルス活動への参画・支援を地道に行ってきたことが高く評価されて、この分野では一番権威がある保健文化賞を受賞しましたよね。これらの社会的な高い評価は、発見会活動の確かさや、地道な継続性、そして幅広い柔軟かつ有用なメンタルヘルス活動の成果に対してなされたのだろうと考えます。
その意味からも、発見会が活発に行ってきた社会への情報の発信や啓蒙活動も目覚しいものがあります。社会的役割の拡大と増大という、いろいろな出版活動、講演会、セミナーなど、各地域でいろいろなメンタルヘルスのセミナーなどが行われていて、北西先生などの講演会が開催されたりしています。
そんな時にも地元の会員のかたたちがとても熱心に普段の地道な活動の仲間といろいろなネットワークの中で準備をしていただき、そこに先生がたが来られて、とてもいい講演会が開催されているのです。先生たちだけではとてもそうはいかないでしょう。専門家とセルフヘルプ・グループである発見会が相互に協働し合って、はじめて有意義なメンタルヘルス講演会が実現していると思えるのです。
今回の森田療法学会での発表で、最も私が伝えたかったのがここのところです。セルフヘルプ・グループとして活動している生活の発見会だからこそ行える、特徴的なメンタルヘルス活動の内容とその意義についてです。前号から本号にまたがって述べることになってしまったので、流れが少々つかみにくくて申し訳ありませんが。前号では、次のような内容について述べました。(2月号参照)
(1)壱当事者が担う活動、地区集談会
(2)助力者原理が生む活動エネルギーの循環
(3)多数の多彩な回復者を輩出
(4)社会的な高い評価、社会への情報発信 次に話すことは、私が特に強調したかった発見会のメンタルヘルス活動的意義です。
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