前号では、「わかちあい」「ひとりだち」「ときはなち」というキーワードを用いて、セルフヘルプ・グループで心が癒されていくプロセスで働く機能のお話しをしました。 つぎには、セルフヘルプ・グループの機能を、その成立の基本的な要件や働きという視点から見てみたいと思います。ほんとうは、この話の方が先だったのですが。そして発見会が、その要件や働きを備えているかどうかを検証してみたいと思います。
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(1)共通の問題と共通の目的(スライド(7))
まず、セルフヘルプ・グループの第一の成立要件は、共通の問題とか悩みや何かの困難さを持った人たち、その人たちを「当事者」と呼ぶのですが、その「当事者」が自発的に集って―なかには最初は家族に連れられて来ているうちに、しだいに自分から行くようになる人もいますが―、古い人も新人もみな対等な立場で協力しあい、親密な人間的交流があって、そして相互に援助し合う機能があることです。それを聞いて、みなさんも、発見会はまさにその要件を持っていることをお認めになるでしょう。しかし、少々の苦言を呈すれば、会員がみな対等であるという意識が持てているかどうかと言う点でしょうか。
つぎには、共通の目的を持って活動していることです。たとえばA.A.で言えば、アルコール依存から回復したいという目的の人は誰でもが参加できるということになるわけなのですね。発見会の場合は、森田理論を学び体験を交流して、神経症からの回復をめざすという共通の目的を持って活動しているということになります。
(2)自我を強化する準拠集団(スライド(7))
その会は、集ったメンバーが、その人の価値観や生き方への何らかの示唆を得られる準拠集団であるということも重要な要件です。「準拠集団」という言葉はちょっと耳に なじみがうすいかと思いますが、そこに拠って立つということで、「よりどころ」にしていると置きかえてもいいかと思います。発見会会員のみなさまは、森田理論・療法によって、自らの価値観や生き方に重要な影響を受けられ、また、発見会活動に心のよりどころを見出してこられたと思います。
その会は準拠集団であるとともに、他の人と同一化ができる場にもなります。たとえば、この人は自分と同じだとか、この人のようになりたいなというふうに、回復のモデルがあって、その人のようになりたいなと憧れると同時に、この人が回復したのなら自分も良くなるかもしれないという希望が生まれるんですね。そして、その人の活動の拠点となり、それを続けるうちに、自分は自分のままでいいと思えるようになる、すなわち、自我が強化されていくということですね。自我強化の源泉ともなる活動なのです。
この「自我強化」をもたらすということは、すごいことなんですね。私たちが精神療法をやっていても、患者さんの自我が弱いと、そのかたの自我を強くするのは至難のわざです。それが、発見会に参加することで、仲間から支えられて森田理論を学び、お互いの交流や援助し合うということの中で、「あるがままの自分こそ尊く価値がある」と思えるようになっていきます、すなわち自我が強化されていくのです。「こんな自分はだめだ」とか「ビクビクして気が小さい自分は、誰よりも劣っている」とさんざん悩み苦しんできたみなさんが、その「神経質的な性格の自分こそいいんだ」というふうに価値観が逆転なさったわけですよね。これこそが森田療法のマジックと言ってもいい、実にすばらしいところだと思うんです。森田先生は、「その性格こそすばらしい」とおっしゃいました。「そのままでいい」というよりも「そのままがいい」、「そのまま変えない方がいい、変わらない方が価値がある」ということですからすごいですよね。
これは余談ですが、私の父も、「神経質者はすばらしい。神経質者はすばらしい素質を持っている」といつも念仏のように言い続けていました。その当時私は中・高・大学生で、自我構築の真っ最中にあったものですから、父に「千賀は、神経質じゃない。外向的だ」と言われて(笑)、それを「外向的な性格はだめな人間」という意味だと受け取ってしまって、神経質の人たちに劣等感を持ってしまい、自己肯定感が持てずに、その後ずいぶん苦労してしまいました。
話を戻しますが、前号でも述べましたが、自分の中でだめだと思って抑圧していた差別から解放されてあるがままが受け入れられ、その「気の小さい自分こそいい」、「自分こそ尊い」と心から思えるようになることを自己尊厳(セルフ・エスティーム)の回復と言います、すなわち自我が強化されることです。心理療法では、それが達成されたら、最も深いレベルの心の回復が達成されたことになるのです。
私はいつも森田療法学会のときに、発見会会員の方の回復体験を聞くのをとても楽しみにしています。すごく悩んで、本当にひどい生活をしていらしたかたが、とても生き生きとしてきて、生活に支障がなくなっただけではなく、非常にポジティブな活動をするようになられますよね。その変化がすごいなと、いつも惹きつけられるのです。
自我を強化できるということは、セルフヘルプ・グループのとても大きな力だと思います。私がずっと長年見守ってきたアルコール依存症の回復者が、「アルコール依存症になって、ほんとに良かった」と言います。同じように発見会でも、「神経症になって良かった」という言葉をよく聞きますし、みなさんの中の多くのかたがそう感じていらっしゃると思います。いろいろそれぞれの言葉の表現はありますが、神経症に悩んで発見会につながったことで、いかに多くを学び、自分の人生が豊かになったかを、多数の会員のかたたちからたくさんうかがってきました。それは、私の財産にもなっています。
(3)助力者原理
このことは、本稿の1回目(12月号)でも述べましたので簡単にしますが、セルフヘルプ・グループの大切な機能です。互いに仲間(相手)を援助し合うだけでなく、自律者(セルフヘルパー)、すなわちみなさんのようなかたたちのことですが、は自分自身のためにも助け合う活動をしているのです。逆の表現をすれば、他の人のために熱心に活動している人ほど、その人自身が多くのものを得てエンパワーメント(心に力を得て勇気づけられる)されることになるという意味です。
発見会でもよく、「人のためになることを、まずしなさい」ということを先輩が後輩に言ったりすると思います。自分のことばかりにとらわれていないで、不安ながら机を並べたりお茶を出すのを手伝ったりしましょうなどとかですね。そうしていると、しだいに他の会員さんたちともなじめてきたり、感謝されてうれしくなったりします。次第に、いろいろな役割を頼まれたり、責任のある役目を果たしたりするようになっていくわけですが、人から援助されてばかりいた人が、今度は人を援助する立場になっていくのです。人を援助した人が最もエンパワーメントされ、そして、人間としても成長するのです。形外会で森田先生がおっしゃった言葉そのままなわけですし、また、発見会自体がそれを長年実証してきたのです。
(4)メンバーが担う、非営利の活動
最後に、セルフヘルプ・グループ活動の特徴としては、メンバー中心の活動であり、専門家の関与はないか、あってもわずかであることです。このことは、私たち専門家の側も、無用な介入をしないように気をつけなくてはいけませんが、また、みなさんも、発見会のメンバーとして胸を張って活動を展開し、専門家にも臆せずアプローチもしていただきたいと思っています。
これまで述べてきましたように、セルフヘルプ・グループ活動は、回復者(当事者)、すなわちみなさん自身が担っているというところに意義があるので、私たち専門家は、サイドからは援助できますが、会の方向とかを云々する立場ではないのです。ある種の自助グループの中には、医者だとか指導者がかなり関わっているグループがあります。また治療者に依存している傾向があるグループもありますけれども、発見会の場合は、正真正銘メンバーのみなさんが担っていらっしゃる活動になっていると思います。
もうひとつ、セルフヘルプ・グループの条件として、経済的な利潤を追求する団体ではないということがあります。これがまさに、発見会が特定非営利法人(NPO)となったことの所以(ゆえん)でもあるわけです。
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