森田療法に見るセルフヘルプ・グループ的要素(2)
~大きい非専門家回復者の役割~
スライド(4)
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また、「形外会」の話にもどしたいと思います。スライド(4)には、形外会で森田先生がおっしゃった言葉を引用してみました。「全快した者は法悦に似たものを感じ、同病相哀れむ心がおこり、犠牲心が発動して、他の患者のために体験を打ち明けたくなる」、そして、「治った先輩は、まだ治っていない後輩を指導・援助するために形外会に出席すること。そうすることで、深い洞察が得られて、大我にめざめる」と。ここで話された言葉の意味がとても深い洞察に基づいたものだということに私が気づいたのは、アルコール依存症のセルフヘルプ・グループを20年ぐらいも学んだ後でした。これらの言葉が示しているのは、自助グループの中核的な理念である「ヘルパー・セラピー・プリンシプル(助力者原理)」という考え方そのものだったのです。森田先生って、何てすごい洞察力を持っておられたんだろうとつくづく感心します。この時代を考えてみると、遥かに遠いアメリカで、自助グループの出発点とも言うべきAA(アルコホーリクス・アノニマス)が、これから誕生せんとしていた、まさに夜明け前の時代だったからです。「治った先輩は、まだ治っていない後輩を指導・援助するために形外会にできるだけ出席しなさい。そうすることで、治った先輩であるあなた自身も、より深い洞察が得られて、より一層大我に目覚めて、人間的に成長しますよ」ということなのですね。
「治った先輩」ですから、ちょうどみなさんそのままだと思います。すっかり回復なさった後も、こうして会の運営を支援し、後から来る人たちの回復を援助していらっしゃいますよね。援助した方たちが元気になってくれてうれしいときもあるでしょうが、大きな労力を費やし、きっと大変なご苦労をなさっておられるのではないかと思うのです。しかし、その努力を積み重ねることで、みなさんご自身が多くのものを得て、人間として大きく成長してこられたことは、ご自分自身が実感しておられると思います。このことが「助力者原理」です。別の表現では「天は自ら助くる者を助く」という言葉もありますね。自ら回復しようと懸命に努力し、また、自分と同じく悩んでいる人たちの回復に手を貸す人、「自らが努力し、人を援助する人自身が、もっとも援助される」ということなんです。そういう循環というか、回復した人が、また次の人を援助するわけですから、非常に効率がよく、援助するエネルギーが次々に生まれ出てくることになります。この原理を、森田先生は非常に鋭く見抜いておられたのです。
スライド(4)の後半を見てください。これまで述べてきましたように、森田先生の広くて深い掌のなかで培われた精神は、多くの有能な非専門家回復者を誕生させ、彼らが指導的な役割を果たし、また、森田療法に多方面への広がりをもたらしてきました。森田全集の中でもいろいろな回復者が登場し、引用されていますよね。森田先生の代からどんどん優れた方たちが出現して、多彩な活動を展開して、森田療法の発展に貢献されてきました。おこがましくも言わせていただけば、父もそのひとりかと思います。
その精神がずっと受け継がれてきて、無数の力ある非専門家回復者を生んできました。最も身近で良い例は、岡本記念財団の岡本常男さんであり、発見会の理事長の横山博さんであり、また、ここにおられるみなさんです。このように、非専門家回復者の持つ力が、「治療」や「専門」という壁を越えて、十分に発揮する場が与えられてきたこと、そこに生活の発見会が誕生し、ここまで発展してくる必然性があったのだと思うのです。
父や長谷川先生や生活の発見会の活動を、強力にバックアップしてくださった高良武久先生が、「水谷君の本は、素人だからわかり易いし読み易い。その方が森田療法がぐっと広まるよ」と言って励ましてくださったと、父から聞いたことがあります。森田療法を現代に伝え広められた高良先生も、非専門家回復者の力量を大きく評価しておられたのです。
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